おいしい野菜作りの基礎!ぼかし肥料から考える微生物と発酵
こんにちは、けいたろうです。
近頃はSDGsという言葉をよく聞くようになりましたね。
農業分野でも最近は循環型で環境にやさしい有機栽培、有機肥料が注目されており
すでに有機栽培に取り組まれている方も多いと思います。
かくいう私もぼかし肥料を見よう見まねで手作りし、それらしく有機栽培を楽しんでいます。
でも、ある時ふと思ったのです。
「家庭菜園3年目を迎えようとしているのに、全然理論的なことを理解していないじゃないか!」と。
これは一から勉強すべきだと思い、本を読みました。
今回は私が勉強したことをアウトプットする場でもあり、皆さんにもぜひ知ってほしい微生物のはたらきをご紹介しようと思います。
この記事はこんな人におすすめ!
・これからぼかし肥料作りにチャレンジしたいと考えている人
・ぼかし肥料は作ったことがあるけど、フィーリングで作っている人
・微生物の働きを詳しく知りたい人
ぼかし肥料とは?
今回はぼかし肥料を例に、微生物のはたらきを紹介します。
ぼかし肥料とは複数の有機物を混ぜて、微生物の力で発酵・分解させた肥料のことをさします。
”ぼかし”とは色々な肥料が混ぜられることで肥料がぼかされている状態を差し、この名がついたようです。
私はぼかし肥料を主に追肥に使っていますが、元肥としても使用でき万能な肥料として知られています。
これはぼかし肥料が即効性と緩効性を兼ね備えた性質を持っているためです。
こんな便利なぼかし肥料が手作りできるとなったら、皆さんも挑戦したくなりませんか?
これを機に微生物についてよく知っていただけたらと思っています。
微生物を知ればぼかし肥料の見方が変わる!!
①微生物による発酵
そもそも「発酵」とは微生物が有機物の形態を変化させることをいいます。
別の言葉でいうと「分解」という言い方もできます。
微生物は植物がそのままでは吸収できない栄養素を、植物が吸収できる形に分解してくれる働きがあります。
微生物をよく知り、微生物のはたらきをうまく活用することで植物にとってよりよい環境を作ってあげることができるのです。
②発酵の際にはたらく主な微生物
皆さんは発酵食品をご存じでしょうか。
味噌、納豆、ヨーグルト、キムチ、酒、醤油・・・挙げたらきりがないくらい身近に発酵食品はあふれています。
これらも微生物(菌)によって発酵させて作られています。
このような発酵には麹菌、納豆菌、乳酸菌、酵母菌が主な発酵菌となっており、
実はぼかし肥料作りでも、この4つの菌が大活躍しています。
それぞれの菌が好む温度やpH等をよく知ることで、微生物マスターになりましょう!
麹菌
・好きなpH:微酸性
・好きな季節:冬
・好きな場所:落ち葉などの下
味噌、醤油、みりん、酢等は和食に欠かせない調味料であり、これらの製造には麹菌がなくてはなりません。
麹菌は2006年に日本醸造学会により「国菌」として認められており、日本人にはなくてはならない菌です。
そんな麹菌はぼかし肥料作りで一番早くに活動を始める菌です。
有機物中には炭水化物が存在しており、この炭水化物を分解する役割を担っています。
麹菌は炭水化物(デンプン)を細かくし、ブドウ糖や果糖にまで分解します。
そのため、この分解反応が進んでいる最中はぼかし肥料から甘酒のような甘い香りがします。
ぼかし肥料を作る際には、ぜひ鼻も使いながら微生物の働きを感じてください!
納豆菌
麹菌が作り出した糖をエネルギー源として、次第に納豆菌のはたらきが活発になっていきます。
分解を得意とする菌で、タンパク質をアミノ酸に変える役割を持っています。
タンパク質以外にも脂肪、炭水化物等の分解も進める菌で、納豆菌による分解がきちんと進むかが、ぼかし肥料の質を左右すると言っても過言ではありません。
ただし納豆菌による分解が暴走するとアミノ酸がさらに分解され、有毒なアンモニアになってしまう可能性があります。
それを防ぐにはぼかし肥料が醤油のようなアミノ酸のにおいがしてくるか、手触りがサラサラしてきた時に、発酵で発生した熱を冷まして、納豆菌の活性を抑えることが効果的です。
乳酸菌
・好きなpH:酸性
・好きな季節:春~梅雨、秋
乳酸菌は麹菌や納豆菌が作った糖を食べて増えてくる菌です。
乳酸菌自体は分解等はあまり行いませんが、乳酸菌から出される有機酸は土の中にある溶けにくいミネラル分を植物が吸収しやすい形に変化させます。
また、有機酸はその名の通り酸であるため雑菌等の消毒も行ってくれます。
余談ですが乳酸菌による整腸効果は乳酸菌が腸内で作り出す酸により、腸内が酸性になり、悪玉菌を殺菌してくれるためなんだそうです。
酵母菌
・好きなpH:酸性
・好きな季節:秋
・好きな場所:果実表面
別名を合成屋ともいうことができるのがこの酵母菌です。
麹菌、納豆菌が細かくした有機物を、植物にとって吸収しやすい形に再合成し、
ぼかし肥料の仕上げを担当する菌です。
酵母菌は酸素がない嫌気性下ではたらくと、アルコールを作り出す性質があるため、
ぼかし肥料を作る際はよく混ぜて酸素を全体的にいきわたらせる必要があります。
活発に活動する温度域、pHをグラフにしてみました。
図に示した範囲外でも活性が高い場合も多々あるようですので、あくまでも目安としてください。
おまけ:EM資材
EMとはEffective Microorganismsの略で、有用微生物群という意味があります。
農家さんなどは、よく畑にEM資材を入れておられるかと思います。
EM資材はメーカーによる内容物の差はありますが、基本的にはこれまで説明したような発酵にいい影響を与えてくれる微生物がたくさん詰まっている資材です。
このような資材は土壌散布により、土中の有用微生物を増やす効果があり豊かな土にしてくれます。
EM資材はぼかし肥料にも使うことができ、発酵を促進させる効果も期待できます。
私は畑の土などをぼかし肥料に入れますので、私にとっては畑の土が天然のEM資材です(笑)
微生物が増えると土が豊かに!
ここまで読み進めた皆さんは、ぼかし肥料にはたくさんの微生物が含まれていることがわかったと思います。
ぼかし肥料を畑に散布することで、畑に存在する麹菌、納豆菌、乳酸菌、酵母菌といった有用な微生物たちが増えます。
これらの微生物がたくさんの有機物を分解し、植物にとって吸収しやすい養分が生み出されるため、植物の生育がよくなるのです。
皆さん、微生物をよく知ることがおいしい野菜づくりの第一歩ということがわかっていただけたでしょうか?
さいごに
今回は微生物のはたらきについて、ぼかし肥料を例に少し詳しく説明しました。
微生物のはたらきがわかれば、ぼかし肥料作りの最中でも「今は、納豆菌がはたらいてくれているな」とか「においからすると今は発酵初期段階で、麹菌の活性が主のようだ」などと微生物博士気分でぼかし肥料作りに取り組めますね!
今回は微生物のはたらきがメインでしたが、ぼかし肥料作りの実践編の紹介記事も作成予定ですので、よろしければそちらも見ていってください!
それではまた次の記事で会いましょう!