財布にも土にも優しい緑肥の驚くべき4つの効果を解説!
こんにちは、けいたろうです!
今回は最近注目の「緑肥」について解説していきたいと思います。
緑肥を導入することにハードルを感じている方も、まずはこの記事で緑肥の基本を押さえて、知識だけでも身に着けていってください。
この記事はこんな人におすすめ!
・緑肥について詳しくなりたい方
・豊かな土作りに興味がある方
・家庭菜園をとことん楽しみたい方
この記事の結論
緑肥は畑の土壌環境を豊かにする優れた植物!
緑肥とは
まず、緑肥という言葉について説明します。緑肥は読んで字のごとく、「緑」の「肥料」です。これはつまり、植物が青々とした状態で土に漉き込み、肥料として使うという意味です。
英語ではカバークロップ(Cover crop)と呼ばれており、直訳すると被覆植物(土を覆う植物)であり、リビングマルチ(※)もカバークロップに含まれます。
多くの場合、田畑などで作物を育てる前に緑肥植物を育てておき、作物栽培前の土づくり時には土に漉き込まれます。
皆さんの中には田んぼ一面にレンゲが咲いている光景を見たことがある方もいらっしゃるかと思いますが、あれは雑草として生えているわけではなく、農家さんが意図的に種をまいて、稲作のための準備をしているのです。
※リビングマルチ・・・植物マルチとも呼ばれ、ある作物を栽培する際に、地表を覆うように同時に栽培する植物
緑肥の効果
①菌根菌が活性化する
菌根菌とは土の中に存在するありふれたカビ類の総称です。菌根菌は根のまわりで生息しており、植物と共生しています。
実は緑肥作物は特に菌根菌が共生しやすい植物(宿主植物)です。
菌根菌のような微生物は有機物をエサにして、腐植を形成し、豊かな団粒構造の土壌を作り出します。
そのため、緑肥は団粒構造の豊かな土壌を作るためにも重要な作物とも言えます。
団粒構造の豊かな土壌では、排水性がよく保肥力があるため作物がすくすくと育つことができます。
また菌根菌は植物が吸収しづらい栄養分であるリン酸などの吸収を助ける効果もあるため、作物の生育を助けます。
緑肥は生育中にも土作りに貢献しますが、刈り取られた後は土に漉き込まれ、再び微生物のエサとして土作りに貢献します。
②雑草を抑制する
緑肥の中には雑草抑制効果(アレロパシー効果)を持つものがあります。アレロパシー効果とは植物が分泌する化学物質により、他の植物が生長を阻害する効果を意味します。
これはエンドウなどにも見られ、エンドウの後作は発芽や生育に注意が必要なことが知られています。
他にも緑肥で土を覆ってしまうことで、雑草が生える場所を物理的に減らすことができます。
大きくなった緑肥は刈り取り、作物の根本に敷き詰めれば有機物マルチング資材としても使うことができ、刈り取られた後でも雑草抑制に一役買います。
また刈り取った緑肥を乾燥させれば、翌年ワラとして色々な使い方ができるので、わざわざワラを買う必要がありません!財布にやさしいですね。
③センチュウを抑制する
センチュウとは土中に存在する微生物の1種で、ほとんどのセンチュウは作物に無害の生き物です。
しかし、一部の種類では作物の生育を遅らせたり、最悪の場合株が枯らしてしまったりと何かと厄介な存在です。
このようなセンチュウ被害から作物を守るためにも、緑肥作物が役立ちます。
作物に悪影響を及ぼすセンチュウは植物の根に寄生しますが、緑肥はセンチュウの宿主としては適しておらず、寄生されたとしてもセンチュウがうまく成長できず増殖するのを防ぎます。
さらに緑肥として利用されるマリーゴールドなどは根からセンチュウ(特にネグサレセンチュウ)に毒性を示し、防除効果があります。
しかし、マリーゴールドの花はトマトなどに穴をあけることで有名なタバコガを寄せ付けるため、近年では品種改良された花の咲かないマリーゴールドが緑肥として用いられることが多いようです(タキイ種苗さんのエバーグリーンという品種です)。
④減肥効果が期待できる
緑肥として利用されるマメ科の植物は、根に根粒菌が共生しています。
この根粒菌は空気中の窒素を植物が窒素分として土中に固定化されます。
そのため土中における窒素分が豊かになり、窒素肥料の減肥につながります。
また、直接的に肥料分を供給せずとも田畑の休閑期をなくすことで、前作で余った地表付近の栄養分が緑肥に吸収され、栄養分の溶脱(栄養分が蒸発や降雨などで地下水に流れ出ること)が軽減します。
栄養分が緑肥に吸収されて、一度土中の栄養分が減ったとしても、緑肥は最終的に土に漉き込まれるため栄養収支はマイナスにはなりませんし、むしろ植物が光合成で生成した炭化水素(有機物)が土に還るため、むしろ土にとってはプラスの効果が期待できます(有機物は微生物のエサになる)。
肥料価格は近年高騰していますので、緑肥は土にも財布にやさしい作物と言えそうです。
緑肥の種類
緑肥には大きく分けて4種類ほどの科に分類され、それぞれ少しずつ異なった効果が期待できます。
①イネ科
イネ科の植物は比較的背が高くなるものが多く(ソルゴーやエンバクなど)、地表部分を支えるため地中深くまで太い根を張っています。また、地表部分ではひげ根を展開しています。
根が地中に張り巡らされることで土が耕され、また根の周辺では植物から有機物が漏れでており、菌根菌の活動が活性化されることで団粒化が促進されます。
そして団粒化が進めば、通気性や排水性がよくなり、よい土壌ができる、という好循環が回っていきます。
またイネ科は根を深くまで張るため、養分を地下深くからも吸収することが可能です。
そのため特にカリなどの養分が溶脱することを防ぎ、表土付近で植物が利用できるカリ分(交換性カリ)が増加することが確認されています。
イネ科の緑肥には以下のような作物が利用されます。
②マメ科
マメ科の最大の魅力は、やはり「根粒菌」です。根粒菌のはたらきで空気中の窒素が土中に固定化されるため土が肥沃になります。
イネ科の植物ほど根の展開力はありませんが、花を咲かせるため景観植物として育てても楽しい、まさに一石二鳥な緑肥です。
イネ科ほど大きくならないので、土に漉き込む際に労力が必要ない点も利点です。
マメ科の緑肥には以下のような作物が利用されます。
③キク科
キク科の作物の中には、根からネコブセンチュウなどのセンチュウを防除する効果がある物質を分泌する種類があります。
そのため土壌中の殺菌のような用途でキク科が緑肥に組み込まれる場合があります。
特にキク科のマリーゴールドなどはその効果が広く知られており、コンパニオンプランツとして畑でよく育てられている植物です。
キク科の緑肥には以下のような作物が利用されます。
④アブラナ科
カラシナに代表されるアブラナ科は土壌で分解される際に、イソチオシアネートという物質が発生し、センチュウ類や土壌病原菌を抑える効果が期待できます。
土壌中であたかも殺菌物質が燻蒸されているような効果が期待できることから、土壌燻蒸剤の代替にもなりえます。
アブラナ科の緑肥には以下のような作物が利用されます。
まとめ
今回は緑肥のもたらす効果を中心にして、緑肥の概要について解説しました。
緑肥栽培は土が豊かになり減肥効果が期待でしますし、おまけにワラを手に入れることもできるので土にも財布にもやさしい、まさに一石二鳥な作物です。
緑肥を栽培する際はイネ科、マメ科などの科による効果の違いをよく理解して、作付け計画に組み込むことが重要です。また特にイネ科の植物はバンカープランツとして利用できますし、キク科の植物はコンパニオンプランツとしても利用できるため、緑肥を作物の近くで同時に栽培する方法も有効だと思っています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
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では今回はここまでにします、また次の記事でお会いしましょう!