理系と学ぶ家庭菜園術

理系なりの解釈で野菜づくりを学んでいきます

不織布の特徴を理系が解説!家庭菜園における最適な使い方とは?

こんにちは、けいたろうです!

今回は農業資材である不織布について、ご紹介ができればと思っています。このような農業資材は、素材の特徴を理解できると一層菜園ライフが楽しくなりますよ。

不織布は特に秋から冬にかけては不織布が活躍する場が増えますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

この記事はこんな人におすすめ!
・不織布の特徴を知りたい方
・不織布の使い方をマスターしたい方
・家庭菜園をとことん楽しみたい方

 

この記事の結論
不織布は安価で優れた資材!でも強度が弱いため、べた掛けなどがGOOD!!

 

 

 

不織布とは?

不織布は、日用品(ガーゼやフェイスマスク、コーヒーフィルター)から工業用品(ろ過材、防音材)まで用途に応じて幅広い分野で使われています。不織布とは呼んで字のごとく、「織っていない布」のことを指します。不織布の素材には大きく分けて「天然繊維」と「化学繊維」の2種類あり、農業資材として一般に用いられるのは化学繊維の不織布です。

不織布の製法としてはいくつか種類があるものの、いずれの不織布も無数の繊維が絡み合うことで1枚の布として成り立っています。強度面では織った布には劣りますが、裏を返せば風合いが柔らかい素材とも言えます。さらに、繊維がランダムに絡み合っているため、ランダムな形状の孔(あな)があり、多孔質構造と言われています。この孔が農業分野でどのようなメリットをもたらすかについては、後述します。

園芸用に販売されている不織布の多くはポリプロピレン製です。ポリプロピレン繊維は水を吸収したり吸湿したりしにくい材質で、軽くて丈夫であることが特徴です。

 

不織布の特徴

1. 通気性に優れる

不織布の最大の特徴は通気性が優れていることです。不織布は短い繊維を交絡(こうらく)させて作られるため多孔質な構造となっており、この部分を介して空気が行き来しやすいのです。

通気性に優れるとは言っても蒸れない程度に空気が入れ替わる、という表現が適切かもしれません。私たちの生活に置き換えてみるとイメージしやすいかもしれませんが不織布マスクだと適度に空気が入れ替わるため、息苦しいと感じることも少ないのではないでしょうか?一方で、布製のマスク着用時に息苦しい経験をされたこともあるのではないでしょうか。これは布がきちんと織られているため、空気の行き来がしづらいことに起因しています。

 

2. 保湿性に優れる

冬場にマスクをしているときには、肌が適度に保湿されている感覚がありませんか?これは不織布が適度な保湿性を持っているからです。これまでご説明してきたように不織布は多孔質で、空気の通り孔(あな)がたくさんありますが、この孔はごく微細であるため空気が完全に入れ替わることはなく、不織布で仕切られている空間内は常に適度な湿度が保たれます。またマスクや農業用不織布は化学繊維で作られているものが大半で、化学繊維自体は基本的に水分を吸収しませんので、水分が外に逃げるのを防いでくれる役割もあります。

 

3. 保温性に優れる

不織布で仕切った空間は適度な水分が保たれ、空気の流れも緩やかになるため熱が溜まりやすい環境になります。実は水蒸気は温室効果の高いガスの一つと言われており、地球に生命が生きていられる適度な温度を保てているのも水蒸気の影響がかなりあります。そのため保湿性のある不織布はしばしば保温性がある資材とも言われます。

しかし、不織布は多孔質構造であり保温効果がそれほど高いわけではないため、保温性を期待する場合にはもう少し適した資材がないか、検討が必要になります。

 

不織布の使い方

不織布の使い方を3つご紹介します。

 

べた掛け

「べた掛け」とは、畝全体に直接不織布などを掛ける使い方を指します。べた掛けすることで保温性、保湿性が高まり発芽促進、生育促進効果が期待できます。また物理的に鳥や虫から作物を守ることもできるため、特にマメ科のタネ蒔き後にはよく使われます。

また、保温効果が期待できることから霜対策にも有効な使い方と言えるでしょう。べた掛けは不織布の上から水やりを行える点も便利な点です。

 

トンネル栽培



「トンネル栽培」とは、アーチ支柱などを使って小さなトンネル状の骨組みを作り、畝を不織布等の被覆資材で覆う方法です。トンネル栽培もべた掛け同様に保温・保湿効果や防虫・防鳥効果が期待でき、生育の促進に繋がります。しかしトンネル栽培では骨組みにパッカーやピンチを使って固定する必要があり、強度が比較的弱い不織布では強風などの影響で破れてしまうリスクがあります。

 

行燈(あんどん)栽培

行燈栽培とは、作物の四方に支柱を立て行燈のように作物を囲う栽培法です。行燈栽培にはよく肥料袋や透明なビニール袋が用いられていますが、不織布で行う方法もあり、防風効果や保温効果が期待できます。

 

私の思う不織布の一番いい使い方は?

私が思う不織布の一番いい使い方は、ずばり「べた掛け」です。実は以前不織布を使ってトンネル栽培をしていたことがありましたが、安い不織布を使っていたため、強度が思いのほか弱く途中で破れてしまいました。行燈はトライしたことがありませんが、本当に風を防ぎたいのであれば肥料袋のような隙間のない資材のほうが適している気がします。

不織布をべた掛けで使う場合は、地面にピンを差して固定してもいいですが、土をかぶせて固定することもできますので取り外しも比較的簡単にできますし、べた掛けであれば破れるリスクもほとんどないため、不織布を再利用することもできます。

 

まとめ

今回は不織布についてご紹介してきました。

不織布は日常生活には欠かせない素材でありながら、園芸・農業分野でもとても有用な資材だということがわかっていただけたかと思います。

特に秋~冬にかけては保温、保湿効果が期待できますし、防虫・防鳥対策としても使うことができます。皆さんもうまく不織布を活用しながら楽しく家庭菜園を楽しみましょう!

 

 

【実録】サツマイモの垂直栽培と通常栽培を比較してみた!!

こんにちは、けいたろうです!

以前垂直栽培に関する紹介をしました。これまでの常識を打ち破るような斬新な仕立て方をするため、垂直栽培について懐疑的な方も多いのではないかと思い、実際にサツマイモの垂直栽培の結果を皆さんに共有します。

 

この記事はこんな人におすすめ!
・垂直栽培に挑戦してみたい方
・サツマイモ栽培に挑戦してみたい方
・家庭菜園をとことん楽しみたい方

 

この記事の結論
垂直栽培のサツマイモは収量、大きさともに通常栽培より優れていた!・・・でもちょっと手間がかかります。

 

今回の検証内容

今回私が栽培したのは紅はるかです。スーパーで購入したサツマイモから苗を自分で作り、それらを斜め植えで育てました。

斜め植えにした苗の一部を垂直仕立てにして、通常栽培と収量を比較しました。(この記事内で通常栽培とは、一般的な露地での栽培方法のことを指します。)

できるだけ栽培条件が同じになるように、畝の中に垂直栽培のものとそうでないものを混在させてみました。

 

 

栽培中の管理

施肥について(通常栽培&垂直栽培共通)

サツマイモは基本的に無施肥で育てられます。私はじゃがいもの後作でサツマイモを栽培しました。じゃがいも栽培で、追肥等十分に行っていたため元肥追肥は一切せずに、サツマイモを栽培しました。

一般的には連作障害等を防ぐために根物(根菜)→実物(実野菜)→葉物(葉野菜)のローテーションで輪作していくのがベターなのですが、今回はしょうがなく根菜を続けて栽培しました(厳密に言うと芋は”根”ではないのですが、ここでは土の中から収穫するという広い解釈で根菜とします)。

 

水やり(通常栽培&垂直栽培共通)

水に関しては、苗の定植初期以外は完全に放置して成り行きで育てました。

 

病害虫管理(通常栽培&垂直栽培共通)

病害虫対策は一切何も行わず、無農薬で栽培しました。

 

ツルの管理

通常栽培

サツマイモはツルが繁茂し、放置していると畝間の土が露出している場所までツルを伸ばして、不定根を出します。これを土からはがす作業をツル返しと言いますが、気づいたときにはツル返しを行っていました。

 

垂直栽培

垂直栽培ではツルをすべて支柱に括り付けます。ツルが伸びたら適宜、麻紐を使って上へ上へと誘引していきました。地面にツルが這わないため、ツル返しは不要です。

 

結果

栽培は6月末から10月末までの約4か月間です。結論は冒頭でも記載した通り、垂直栽培のほうが全体的に優れていました。下の写真は隣あった垂直栽培と通常栽培の比較です。写真はあくまで一例ですが、垂直栽培は全体的に大きな芋が多いと感じ、噂に違わぬ結果をもたらしてくれました。

 

 

考察

どうして垂直栽培のほうが大きくなったか

では、どうして垂直栽培のほうがより大きく、収量が多い結果となったか考えてみます。やはりこれは垂直栽培の根本的な原理が影響していると思われます。垂直栽培は植物が本来もつホルモンの力を最大限に生かす栽培法として近年注目を浴びつつあります。オーキシン、サイトカイニン、ジベレリンなどの植物ホルモンたちが効率的に働きやすくなり、植物本来がもつ自己防衛能力や成長力を最大限に発揮されます。この影響により、芋の肥大が通常栽培より良好だったものと考えられます。

垂直栽培の詳細はこちらの記事で解説しています!

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

垂直栽培のメリット・デメリット

実際に垂直栽培を行ってみて、垂直栽培にもメリットとデメリットがあると感じたので皆さんにシェアしたいと思います。

 

垂直栽培のメリット

①大きな芋がたくさん収穫できる

これは最大のメリットと言えます。皆さんは食べるために野菜を育てているわけですから、たくさん獲れたほうが嬉しいですよね。写真サイズの立派なサツマイモがごろごろ収穫できましたよ。

 

②サツマイモの生育状態を観察するのが容易

サツマイモ栽培で最も恐れるべき病気は”サツマイモ基腐病”ですが、垂直栽培はこの診断が比較的容易であると感じました。

サツマイモ基腐病は症状が現れると、葉や茎が変色したり茎の根本が萎れたりします。このような症状が発見された場合、他の株に影響を及ぼす前に早期にその株を除去することが必要ですが垂直仕立ての場合、その発見が簡単になります。通常栽培では地面を這うようにツルが広がっていくため、茎の状態を確認するためにツルを大きく持ち上げたり、かき分けたりする必要があります。しかし垂直栽培では常にツルや葉を支柱に誘引しているため茎や地際の状態が一目でわかり、病気の症状を早期に発見することができます。今回の栽培では幸い、病気の影響はありませんでした。

サツマイモ基腐病については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

垂直栽培のデメリット

①誘引作業が大変

サツマイモ栽培は基本的に追肥がなくても育てることができるため、手間いらずの野菜なのですが、垂直栽培では誘引が必要になります。サツマイモ栽培では特にツルが旺盛に伸びるため、誘引する高さも必然的に高くなりますし、茎や葉が多いので縛り付けるために必要な力も結構必要です。

 

②支柱が必要になる

私はそれほど支柱を保有していなかったこともあり、今回は一部の株のみで垂直仕立てを試してみましたがもしたくさんの苗を植えられる場合、支柱もそれだけの数をそろえる必要があります。

支柱も最近では100円均一ショップで手に入るとはいえ、たくさんそろえるとなるとなかなかの痛手です。

 

私なりの結論

今回実際に垂直栽培、通常栽培の両方を行ってみて、私なりの結論を出しました。

それは「小規模な垂直栽培が最強!!」ということです。

この結論の根拠は3つあります。

 

①小規模でもある程度の収量を確保できる

今回の実験でわかったことは、垂直栽培では通常の栽培よりも収量が見込めるということです。そのため、通常栽培に比べ必要なスペースが少なくなります。そうすれば空いたスペースで別の野菜を育てることができます!

 

②誘引作業が思いのほか大変だった

実際にやってみて感じたのが、垂直仕立ての誘引作業の大変さ。特にサツマイモはツルの生育が旺盛なため誘引作業の頻度が他の野菜よりも多くなります。そのためたくさんのサツマイモを垂直栽培で育てるのはかなりの労力が必要になると感じました。

 

③資材の準備が大変

こちらは金銭的な問題ですが、資材をたくさん準備するのが痛手というのも小規模でいいと感じた理由の一つです。サツマイモを家庭菜園で栽培するなら、ほどほどの規模で垂直栽培をするのが家庭菜園の方にはぴったりの方法だと思っています。

 

まとめ

今回はサツマイモの垂直栽培について、実体験に基づいた私なりの方針をご紹介してきました。垂直栽培に挑戦したことがない皆さんも実験的に垂直栽培にトライしてみてはいかがでしょうか。

では、また次の記事でお会いしましょう!

 

緑肥栽培で気を付けるべきポイントとは?注意点など4選をご紹介!

こんにちは、けいたろうです!

最近注目されている緑肥ですが、緑肥を育てる上で必ず押さえておきたいポイントがありますので、今回はそのポイントを4つに絞って解説していきます。

 

この記事はこんな人におすすめ!
・緑肥に興味がある方
・豊かな土作りに興味がある方
・家庭菜園をとことん楽しみたい方

 

この記事の結論
緑肥は計画的に栽培して、草丈や多様性にも注意しよう!

 

ポイント① 栽培は計画的に

緑肥を利用する場合、作物の栽培前に緑肥を土に漉き込むことで土づくりを行います。

つまり、①緑肥の生長期間、②緑肥を土に漉き込んでから寝かせる期間、③作物の栽培開始時期、を見込んだうえで緑肥の種まきをする必要があるということです。

ちなみに緑肥を漉き込んでから土の中で寝かす期間は季節によりますが夏では最低1週間、冬では最低3週間は必要と言われています。

 

緑肥栽培スケジュール例

また、緑肥の栽培期間は長く育てるほどイネ科の植物などは茎が太く硬くなる(炭素比率が上がる)ため、漉き込む作業が大変になるのと同時に、分解に必要な期間が長くなります。

茎が太くなった植物を裁断するなどの作業はご自身の手持ちの道具と相談する必要がありますので、緑肥は無理に大きくしすぎずに適度な大きさで刈り取ってしまうのも賢明な判断です。

ちなみに一般的にイネ科は出穂前、マメ科は開花前が最適な漉き込み時期とも言われています。

緑肥を土づくりに活用するには作付け計画をしっかりと考えたうえで種まきをしましょう!

 

ポイント② 目的を意識して緑肥の科を選定する

緑肥に利用される植物にはイネ科、マメ科、キク科、アブラナ科の大きく4つの科の植物があります。

それぞれの役割についての詳細は過去の記事をご参照いただければと思いますが、土づくりにおいて何を重視するのかによって育てるべき緑肥を決める必要があります。

土の団粒構造を豊かにしたい、窒素分を補いたい、センチュウを駆除したい、次年度使えるワラを手に入れたい等の目的をもっていれば緑肥の品種選びも困らなくなりますよ。

ちなみに次に述べることとも関連しますが、緑肥を育てる際には1種類だけでなく複数の科や品種をミックスして育てることをオススメします。

 

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ポイント③ 多様性を豊かに

緑肥を植える上で、ぜひ意識したいのが緑肥の種類です。

田畑、人工林など人為的に管理されている区画では1種類のみから成る生態系もあり得ますが、自然界を見渡して1種類の植物だけが繁茂している光景は目にしたことがないと思います。

緑肥も自然界と同じように様々な科、品種を混ぜて栽培することで土の中の生態系もより複雑になり、豊かな生物多様性が生み出されます。

この生物多様性は微生物の活動を促し、団粒構造のある豊かな土づくりにも役立ちます。

 

種苗店などでは、緑肥の種をあらかじめブレンドした緑肥ミックスを販売しており、様々な緑肥の種が混合されています。

あらかじめ種がいい具合にブレンドされているため、自分で品種を選定してミックスする手間を省くことができますのでお手軽ですし、今はインターネットでも購入することができるので便利です。

私はこだわって品種を選びたいよ、という方は様々な緑肥の種が種苗店に販売されていますので、どれを育てような悩みながら選ぶのも楽しいと思います。

緑肥にはイネ科のように花を咲かせないまま土に漉き込むものもありますが、純粋にお花も楽しみながら育てたいという方にはクリムゾンクローバーやひまわり、マリーゴールドなどがおすすめです。

 

実は緑肥も連作障害が発生することがあるため、様々な緑肥を育てることで特定の病害虫の発生を防ぎ、連作障害の回避にも繋がります。

 

ポイント④ 緑肥の繁殖力を把握する

私たちがよく目にするクローバー(シロツメクサ)などは、緑肥としても利用できるマメ科の植物ですが、シロツメクサは繁殖力が強く、匍匐茎(地上を這うように茎が伸び、節から根が出る)でどんどん生息地を拡大していきます。

クローバーで地上を覆うことは、決して悪いことではありません。

他の雑草を抑制することにも役立ちますし、土の中では根粒菌がせっせと空気中の窒素を固定化してくれるため土壌が豊かになります。

しかし、きちんと管理をしないと他の作物に影響したり、漉き込みできなかった茎から再び繁殖を始めたりします。

特に春~夏にかけて育てる緑肥は気温等も相まって大きく、そして広く育つものがあるので注意が必要です。

 

まとめ

今回は緑肥を栽培する上で注意したいポイントを4つに絞ってご紹介しました。

どれも大事なポイントになりますので、ぜひ色々考えながら緑肥を活用してください。

今回は触れませんでしたが、栽培中の緑肥はバンカープランツとしても活用できます。

土づくりだけでなく、バンカープランツとしても緑肥植物を使ってみてはいかがでしょうか。

バンカープランツについては過去の記事をご参照ください。

 

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では、次の記事でお会いしましょう!

 

財布にも土にも優しい緑肥の驚くべき4つの効果を解説!

こんにちは、けいたろうです!

今回は最近注目の「緑肥」について解説していきたいと思います。

緑肥を導入することにハードルを感じている方も、まずはこの記事で緑肥の基本を押さえて、知識だけでも身に着けていってください。

 

この記事はこんな人におすすめ!
・緑肥について詳しくなりたい方
・豊かな土作りに興味がある方
・家庭菜園をとことん楽しみたい方

 

この記事の結論
緑肥は畑の土壌環境を豊かにする優れた植物!

 

 

緑肥とは

まず、緑肥という言葉について説明します。緑肥は読んで字のごとく、「緑」の「肥料」です。これはつまり、植物が青々とした状態で土に漉き込み、肥料として使うという意味です。

英語ではカバークロップ(Cover crop)と呼ばれており、直訳すると被覆植物(土を覆う植物)であり、リビングマルチ(※)もカバークロップに含まれます。

多くの場合、田畑などで作物を育てる前に緑肥植物を育てておき、作物栽培前の土づくり時には土に漉き込まれます。

皆さんの中には田んぼ一面にレンゲが咲いている光景を見たことがある方もいらっしゃるかと思いますが、あれは雑草として生えているわけではなく、農家さんが意図的に種をまいて、稲作のための準備をしているのです。

 

※リビングマルチ・・・植物マルチとも呼ばれ、ある作物を栽培する際に、地表を覆うように同時に栽培する植物

 

緑肥の効果

①菌根菌が活性化する

菌根菌とは土の中に存在するありふれたカビ類の総称です。菌根菌は根のまわりで生息しており、植物と共生しています。

実は緑肥作物は特に菌根菌が共生しやすい植物(宿主植物)です。

菌根菌のような微生物は有機物をエサにして、腐植を形成し、豊かな団粒構造の土壌を作り出します。

そのため、緑肥は団粒構造の豊かな土壌を作るためにも重要な作物とも言えます。

団粒構造の豊かな土壌では、排水性がよく保肥力があるため作物がすくすくと育つことができます。

また菌根菌は植物が吸収しづらい栄養分であるリン酸などの吸収を助ける効果もあるため、作物の生育を助けます。

 

緑肥は生育中にも土作りに貢献しますが、刈り取られた後は土に漉き込まれ、再び微生物のエサとして土作りに貢献します。

 

②雑草を抑制する

緑肥の中には雑草抑制効果(アレロパシー効果)を持つものがあります。アレロパシー効果とは植物が分泌する化学物質により、他の植物が生長を阻害する効果を意味します。

これはエンドウなどにも見られ、エンドウの後作は発芽や生育に注意が必要なことが知られています。

 

他にも緑肥で土を覆ってしまうことで、雑草が生える場所を物理的に減らすことができます。

大きくなった緑肥は刈り取り、作物の根本に敷き詰めれば有機物マルチング資材としても使うことができ、刈り取られた後でも雑草抑制に一役買います。

また刈り取った緑肥を乾燥させれば、翌年ワラとして色々な使い方ができるので、わざわざワラを買う必要がありません!財布にやさしいですね。

 

③センチュウを抑制する

センチュウとは土中に存在する微生物の1種で、ほとんどのセンチュウは作物に無害の生き物です。

しかし、一部の種類では作物の生育を遅らせたり、最悪の場合株が枯らしてしまったりと何かと厄介な存在です。

このようなセンチュウ被害から作物を守るためにも、緑肥作物が役立ちます。

作物に悪影響を及ぼすセンチュウは植物の根に寄生しますが、緑肥はセンチュウの宿主としては適しておらず、寄生されたとしてもセンチュウがうまく成長できず増殖するのを防ぎます。

 

さらに緑肥として利用されるマリーゴールドなどは根からセンチュウ(特にネグサレセンチュウ)に毒性を示し、防除効果があります。

しかし、マリーゴールドの花はトマトなどに穴をあけることで有名なタバコガを寄せ付けるため、近年では品種改良された花の咲かないマリーゴールドが緑肥として用いられることが多いようです(タキイ種苗さんのエバーグリーンという品種です)。

 

④減肥効果が期待できる

緑肥として利用されるマメ科の植物は、根に根粒菌が共生しています。

この根粒菌は空気中の窒素を植物が窒素分として土中に固定化されます。

そのため土中における窒素分が豊かになり、窒素肥料の減肥につながります。

また、直接的に肥料分を供給せずとも田畑の休閑期をなくすことで、前作で余った地表付近の栄養分が緑肥に吸収され、栄養分の溶脱(栄養分が蒸発や降雨などで地下水に流れ出ること)が軽減します。

栄養分が緑肥に吸収されて、一度土中の栄養分が減ったとしても、緑肥は最終的に土に漉き込まれるため栄養収支はマイナスにはなりませんし、むしろ植物が光合成で生成した炭化水素有機物)が土に還るため、むしろ土にとってはプラスの効果が期待できます(有機物は微生物のエサになる)。

肥料価格は近年高騰していますので、緑肥は土にも財布にやさしい作物と言えそうです。

 

緑肥の種類

緑肥には大きく分けて4種類ほどの科に分類され、それぞれ少しずつ異なった効果が期待できます。

 

①イネ科

イネ科の植物は比較的背が高くなるものが多く(ソルゴーやエンバクなど)、地表部分を支えるため地中深くまで太い根を張っています。また、地表部分ではひげ根を展開しています。

根が地中に張り巡らされることで土が耕され、また根の周辺では植物から有機物が漏れでており、菌根菌の活動が活性化されることで団粒化が促進されます。

そして団粒化が進めば、通気性や排水性がよくなり、よい土壌ができる、という好循環が回っていきます。

またイネ科は根を深くまで張るため、養分を地下深くからも吸収することが可能です。

そのため特にカリなどの養分が溶脱することを防ぎ、表土付近で植物が利用できるカリ分(交換性カリ)が増加することが確認されています。

 

イネ科の緑肥には以下のような作物が利用されます。

 

イネ科の緑肥一覧

 

マメ科

マメ科の最大の魅力は、やはり「根粒菌」です。根粒菌のはたらきで空気中の窒素が土中に固定化されるため土が肥沃になります。

イネ科の植物ほど根の展開力はありませんが、花を咲かせるため景観植物として育てても楽しい、まさに一石二鳥な緑肥です。

イネ科ほど大きくならないので、土に漉き込む際に労力が必要ない点も利点です。

マメ科の緑肥には以下のような作物が利用されます。

 

マメ科の緑肥一覧

 

③キク科

キク科の作物の中には、根からネコブセンチュウなどのセンチュウを防除する効果がある物質を分泌する種類があります。

そのため土壌中の殺菌のような用途でキク科が緑肥に組み込まれる場合があります。

特にキク科のマリーゴールドなどはその効果が広く知られており、コンパニオンプランツとして畑でよく育てられている植物です。

キク科の緑肥には以下のような作物が利用されます。

 

キク科の緑肥一覧

 

アブラナ科

カラシナに代表されるアブラナ科は土壌で分解される際に、イソチオシアネートという物質が発生し、センチュウ類や土壌病原菌を抑える効果が期待できます。

土壌中であたかも殺菌物質が燻蒸されているような効果が期待できることから、土壌燻蒸剤の代替にもなりえます。

アブラナ科の緑肥には以下のような作物が利用されます。

 

アブラナ科の緑肥一覧

 

まとめ

今回は緑肥のもたらす効果を中心にして、緑肥の概要について解説しました。

緑肥栽培は土が豊かになり減肥効果が期待でしますし、おまけにワラを手に入れることもできるので土にも財布にもやさしい、まさに一石二鳥な作物です。

緑肥を栽培する際はイネ科、マメ科などの科による効果の違いをよく理解して、作付け計画に組み込むことが重要です。また特にイネ科の植物はバンカープランツとして利用できますし、キク科の植物はコンパニオンプランツとしても利用できるため、緑肥を作物の近くで同時に栽培する方法も有効だと思っています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

 

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では今回はここまでにします、また次の記事でお会いしましょう!

 

菌根菌やエンドファイトって?土づくりを支える微生物5選について解説!

こんにちは、けいたろうです!

今回は目に見えない、畑の地下で営まれている菌類のはたらきについて、ご紹介します。

畑の土1gには10億以上の細菌がいると言われていますが、これらの中から特に土づくりに関わる重要な菌類をピックアップして解説していきます!

菌類を増やすコツについてもご紹介していきます。

 

この記事はこんな人におすすめ!
・土づくりに関わる菌について詳しく知りたい方
・豊かな土作りに興味がある方

 

土づくりにかかわる微生物たち

有機農法は別名「微生物農法」とも呼ばれるほど様々な微生物の力を借りながら作物を育てています。

微生物には生物の遺体を土に還す分解屋の役割があり、ここでは5つの微生物について説明します。

 

①菌根菌

菌根菌はカビの仲間です。菌根菌は菌糸の一部を植物根の表皮下の組織内に潜り込ませて、植物から糖分をもらって生活しています。

一見ただの迷惑な菌かと思いきや、菌根菌は糖分をもらう見返りとして根が届かないところにあるリンや微量栄養素を集めて根に供給したり(内生菌根菌)、根の表皮周囲に叢(くさむら)構造の菌糸の膜を作って有害微生物の侵入を阻むはたらき(外生菌根菌)をします。ちなみにこの菌根菌のおかげで、植物が吸収できる養分が格段に違ってくることが実際に証明されています。

このように菌が表皮に干渉することで、植物は内部では抗酸化物質や様々な植物栄養素の生成が促されるそうです。

内生菌根菌のはたらき(リンや微量栄養素を集めて根に供給)

 

内生菌根菌はアブラナ科アカザ科(ホウレンソウなど)、タデ科(ソバ)など少数の植物種には共生しないものの、ほとんどの植物と共生します。菌根菌は雑草とも共生しますので、作物周辺に雑草が生えていると、作物にも早く菌根菌が定着します。

また菌根菌は菌糸でアメーバ状に生息域を拡大していきます。拡大した菌糸は複雑なネットワークを形成し、菌糸を介すことで植物間で栄養のやり取りをしているような世界が広がっているのです。

 

外生菌根菌のはたらき(有害微生物の侵入を阻む)

 

②エンドファイト

菌根菌と似た働きをする微生物群「エンドファイト」が注目されています。

エンド(=内部)ファイト(=植物)は内生菌と訳され、自然界ではほとんどの植物が根の中や地上部の組織内に共生菌(カビや細菌)を棲まわせています。

菌糸の一部が根の外に伸びると、土壌中の水に溶けたアミノ酸やリン酸を植物に送り届けます。植物からは見返りとして糖分を受け取っている点は菌根菌と同様です。

根の外に伸びた菌糸は、その先が別の植物根に入り込むことがあり、エンドファイトが植物の根を橋渡しすることで、栄養の橋渡しも行われます。

エンドファイトの特徴は以下の通りです。

 

エンドファイトの特徴
・酸性土壌や貧栄養などの不適地で植物を助ける
・自然界ではほとんどの植物に棲みついている
・土壌中の窒素が有機態(アミノ酸類)である場合に植物に侵入
・低温条件で植物生育を促す
・植物生育を促す植物ホルモンを生成させることがある
・植物が病害虫に強くなる

 

病害虫に強くなるメカニズムとしては、エンドファイトが根に侵入することで植物が刺激され、植物体内で病害抵抗性反応を誘導する効果があるためです。

ちなみにエンドファイトをうまく作物に定着させるには化学肥料を使わず、なるべく耕さないで雑草を生やすことが有効です。

 

③窒素固定微生物

窒素固定微生物は空気中の窒素を自身のタンパク源にして増殖し、結果的に植物が利用できる窒素源を増やすはたらきがあります。

窒素固定微生物の代表が根粒菌で、マメ科の植物と共生する例がよく知られています。

ダイス、クローバーなどはこれらの菌と共生、生育に必要な窒素分を菌からわけて成長しています。

窒素固定菌をうまくはたらかせるには栄養が多すぎないこと、適度に草を生やすことが大切と言われています。

 

④硝化(しょうか)菌

雑草を鋤きこんだり堆肥を混ぜ込んだりすると、一時的にアンモニアが発生します。これらが途中にたまると作物にとって有害ですが、硝化菌はこのアンモニアを植物が吸収できる形(硝酸イオン)まで変化させる役割があります。

硝酸菌はアンモニア亜硝酸を栄養とする無機栄養微生物です。これらは無機栄養分を餌にして増殖することができ、土壌微生物中には約5%ほどしか存在しない貴重な存在です。ちなみに残りの95%は反対に有機物を餌にする有機栄養微生物です。

 

⑤根圏微生物

根圏には無数の微生物が存在しています。

根圏で生活する微生物たちは、根から分泌される糖分、有機酸、老廃物などから栄養を摂っています。

これらの微生物は根の周囲の有機物を分解して浄化し、リサイクルして再び植物の栄養源につくりなおします。

さらに枯れた根や堆肥などの有機物を分解して得られたアミノ酸などを、自分のエネルギー源、タンパク源にして増殖し、分解した栄養を次々と植物に供給します。

このように根圏微生物と植物は、大まかなくくりでみたときに共生している関係と言うこともできます。

 

菌類を増やすには?

土づくりには様々な菌が活躍していることがわかったところで、次はこのような菌が住み着きやすくする環境づくりについて解説します。

 

①化学薬品を使用しない

除草剤や農薬は、土中の生物多様性を破壊します。

自然界では様々な生物がちょうどよいバランスを保ちながら生活をしていますが、人為的に化学薬品が散布されることでそのバランスが壊れ、生態系が乱れます。

散布したあと、しばらくすると生態系のバランスは再び整えられますが、微生物たちの生活環境を崩すことは、豊かな土作りとは逆方向となってしまいます。

 

②化成肥料を使用しない

化成肥料は即効性があり、非常に便利な肥料ではありますが有機物を含まない点が欠点となります。

なぜなら微生物は有機物を主に食しているためです。

微生物たちの食べ物となる有機物を土に供給する意味では、化学肥料だけ使用する方法はおすすめできません。

おすすめは家庭で簡単に作れるぼかし肥料を追肥元肥として使うことです。

詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください!

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

③土をむやみに耕さない

微生物のはたらきを最大限に生かす最適な方法、それは土を耕さないことです。

土を耕さないことで微生物や植物の根を取り巻く微生物のはたらきを、最大限に生かすことができます。

耕すという行為は、土を柔らかくして植物が根を張るのにいい環境を作るために行います。しかし実は、目に見えない土中微生物の住処を破壊している行為でもあるのです。

ただ不耕起栽培に馴染みがなく、新しい栽培方法にチャレンジするのをためらう気持ちも十分理解できますし、私のように市民農園で周囲の理解を得ることが難しく、やむなく耕起栽培を継続している方もいらっしゃるかと思います。

不耕起栽培には地力が上がるなどのメリットがたくさんありますので、まずは知識だけでも身に着けてはいかがでしょうか。知識の習得には過去の記事が役立ちます。

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

まとめ

いかがでしたか?土づくりには多くの菌類が関わっています。今回ご紹介した菌類以外にも土中には数えきれないほどの菌類が生息しており、複雑な生態系を築きあげています。

特に菌根菌やエンドファイトは近年非常に注目されている菌類で、今後も研究が進めばさらなる役割等が発見されるかもしれないです。

目に見えない菌たちに感謝しながら、家庭菜園ライフを楽しみましょう。

それでは次の記事でまたお会いしましょう!

 

畑の地力を上げるには?地力アップのコツを徹底解説!

こんにちは、けいたろうです。

不耕起栽培について調べていると、よく「地力」という言葉に出会います。

地力という言葉はとても曖昧で、意味がわかるような、でもしっかりとはわからない・・・という方も多いのではないでしょうか。

今回はこの地力について、ご紹介していきたいと思います。

また、地力を上げる方法についてもご紹介します!

 

この記事はこんな人におすすめ!
・土壌を豊かにしたい方
・地力について学びたい方
不耕起栽培に関心がある方

記事の内容に入る前にまず結論を先に言います。

この記事の結論
豊かな生物多様性が地力を上げる!

 

地力とは

地力というのはすごく曖昧な表現ですが、簡単に言ってしまうと「よく肥えた土」「植物を育てる能力が高い土」と言い換えられます。

ではこの地力について、2つの観点から深堀りしていきましょう。

栄養地力

栄養地力とは作物に栄養や水分を供給する力(肥沃度)のことです。

土が肥沃だと肥料をあげなくても作物が育ち、大雨でも肥料成分が容易に流出しません(保肥力が高い)。

地力がある土壌は外部から投入された養分(肥料)がなくとも、微生物の分解等によって有機物から養分が作られるため、少量の肥料で作物がよく育つようです。

これらの栄養分が蓄えられているのが、腐植と呼ばれる構造です。

腐植構造が多い土は保肥力が高く、栄養地力が総じて高いです。(腐植についてはあとで詳しく解説します)

 

緩衝地力

緩衝地力とは地温や水分量、土中の空気量、養分濃度、pHなどを一定に保つ力のことを指します。

また、病害虫を増殖させないという意味での緩衝作用が高い土は地力が高いです。

植物の根は、常に一定の環境下にあることを好みます。病原菌を少なくしたり、自分の根から出す老廃物で自家中毒にならないようにすることが土には求められます。

そのため土中の緩衝力が高い土は、植物がよく育つ豊かな土ということができます。

腐植が多い土は緩衝能力にも長けています。

 

腐植っていう言葉が2回も出てきたんだけど、腐植って何?

腐植についても簡単に説明していきましょう!

 

腐植とは

腐植とは植物や虫、微生物などの遺体や排泄物が微生物によって分解されたのち、さらに再合成によってつくられた土壌固有の高分子化合物で、土壌の貯金とも表現されることもあります。

腐植は黒っぽくて粘りがあり、細かい土の粒子がくっついた団粒を作り出します

団粒が集まってできる構造が団粒構造であり、団粒構造が豊かな土壌では水と養分がたっぷりと蓄えられています。

また団粒構造が発達している土は排水性、通気性にも優れており植物の根にとって快適な空間です。

繰り返しになりますが腐植、ひいては団粒構造を生み出すのは土中生物です。つまり、この土中生命の活動を活性化させることが、地力を上げるための近道なのです。

 

 

畑における生物多様性とは

豊かな土壌を作るためには、腐植を作り出す生物たちの活動が不可欠であることを学びました。では生物の活動を活性化させるためにはどうすればよいのでしょうか。

ここでは、土中の食物連鎖を理解することで生物多様性についてご紹介します。

 

畑における土壌生物の種類

グループ1:枯れた植物や生物の遺体を食べる腐植動物

ミミズ、ヤスデ、ワラジムシ、トビムシ、ササラダニなどがこの部類に当てはまります。有機物の初期分解を助ける役割があります。

 

グループ2:他の虫や生きた小動物を食べる捕食動物

クモ、ムカデ、ゴミムシ、ハネカクシ、トゲダニなどがこの分類に当てはまります。グループ1の生物等を捕食し、土壌内外の生物バランスを保っています。

 

グループ3:小動物よりも小さな生物

菌類(カビ類)、細菌類、アメーバのような原生生物などがこの分類に当てはまります。これらの生物は数えきれないほどの種類がおり(土中生物の約70%程度)、複雑な食物連鎖を構築しています。これらの生物は有機物の分解と循環を担っており、病害虫との拮抗作用に役立っています。

微生物の中には植物と共生関係にあったり、土づくりにかかわったりする硝化菌、菌根菌、窒素固定菌などが存在しており、有機栽培では大変お世話になる菌たちです。

 

土壌生物は土壌表面で生活している

これまでご紹介した土壌生物は主に地表付近に多く存在しています。つまりこれらの生物のはたらきを活性化させるには、土壌生物たちの居場所を提供することが一番大切だと言えます。このような観点から考えると、定期的に地表を耕すという行為は、生物たちの居場所を壊し、生物相をリセットするため多様性を育むことと真逆のことをしていると言えます。

 

根圏が織りなす生物多様性

根圏とは植物の根の養水分吸収活動、根からの物質分泌や根が枯れることによって有機物が提供されるなど、多数の土壌生物が活発に活動している範囲のことを指します。根圏と非根圏の土を比較すると、驚くべきことに生息している微生物の数が2~20倍ほど違うとも言われています。

つまり、植物の根は生物にとって大事な住処になるということです。

この根が多い土地、つまり雑草だらけの土がいかに生物多様性が豊かか想像するだけでワクワクしますよね。

 

地力が上がる不耕起栽培

①不耕起は腐植を増やす

実はこれまで紹介してきた地力を上げる方法、つまり「腐植を増やす」「生物多様性を豊かにする」ためには不耕起栽培が向いています。

腐植を増やすためには有機物や生物の遺体が豊富にある状態が必須です。不耕起栽培では基本的に除草はせず、また作物の残渣等も持ち出さないのが基本的な考えですので、通常の慣行栽培よりも有機物が土に還りやすい環境にあります。

加えて、雑草をあえて除草しないため土の中には豊かな根圏が築かれ、生物多様性も増します。生物多様性が築かれればおのずと地力はどんどん豊かになっていきます

 

②不耕起は土に炭素(有機物)を送り込む

不耕起栽培では、土が常に植物に覆われた状態であり、慣行栽培のように土が露出している場所はありません。

自然環境の中で、土が露出するような環境はごく一部の不健康な土だけです。

植物が土を覆っているという状況は、実は土にとても良い状態と言えます。

なぜなら、植物は土中に有機物(炭素)を送り込む大切な役割を担っているからです。

植物は光合成をして空気中の二酸化炭素から単糖類を合成しており、この単糖類の一部は根から土中に漏れ出していきます。

この漏れ出す単糖類を栄養にして、微生物の活動が活発になり団粒化の促進につながります。

植物は微生物に栄養をおすそわけすることで、その見返りとして自身の住環境をよくしてもらい、微生物からは養分をわけてもらいます。まさに共生関係と言えます。

 

地力が下がる慣行栽培

化学肥料を使い、土を積極的に耕す慣行栽培では地力を消耗するばかりです。なぜなら土を耕すことで土壌生物の住環境を破壊しますし、除草することを基本とするため根圏も豊かになりません。地力向上のためには、少なくとも根が地中に残っているほうが微生物の住処となるため、除草の際は根を残すことが理想です。

さらに慣行栽培では土が露出していることから、炭素分が十分に土中に送り込まれないため、微生物の活発も活発化しにくくなります。

 

まとめ

ここまで地力を上げるための考え方についてご紹介してきました。

地中の微生物の力は私たちが考えるよりもはるかに大きく、生物多様性が保たれる環境では地力向上が期待できます

生物多様性を高めるには、以下の取り組みがおすすめです。

 

生物多様性アップのコツ
・土をむやみに耕さない
・化学肥料を使わない
・土を植物で覆う
・草刈りでは根を残す

 

いかがでしたか?

次の記事では、根圏ではたらく菌類について詳しく解説します。

それでは次の記事でまた、お会いしましょう!

 

 

【新常識】不耕起栽培とは?メリットやデメリットについて詳しく解説!!

こんにちは、けいたろうです。

今回は不耕起栽培についてご紹介したいと思います。

まだ実践するには至っていないものの、様々な書籍等に触れるにつれ不耕起栽培が今後、家庭菜園界の主流となるのではないかと感じています。

今回は今後、主流となるかもしれない不耕起栽培について概要やメリット、デメリット等をご紹介したいと思います。

 

この記事はこんな人におすすめ!
不耕起栽培について知りたい方
有機無農薬栽培に関心がある方

記事の内容に入る前にまず結論を先に言います。

この記事の結論
不耕起栽培は生物の多様性を重視する世界の新潮流である!

え、世界の新潮流ってどういうこと!?

まあ、慌てないで。じっくり解説していきますよ。

 

 

不耕起栽培の基本的な考え方

人の代わりに生き物が耕す

不耕起栽培は文字通り耕さない、つまり極力自然に近い土の状態で野菜を育てます。自然界では土を耕すのはミミズ 植物の根にお任せです。ミミズが土を耕すのは有名な話ですよね。詳しく知りたい方はこちらの記事をぜひ。ミミズのありがたみがよくわかります。

また植物の根は土中を縦横無尽に張り巡り、やがて枯れます。根が枯れたあとにはトンネル状の根穴(こんけつ)構造ができあがり、毎年繰り返されるこのサイクルは耕すことと同じ効果をもたらします。

 

雑草は有用資源

雑草はこれまで邪魔者として扱われていましたが、不耕起栽培ではいかにうまく雑草と付き合っていくかを考える必要があります。

なぜなら雑草の根は先ほども述べたように土を耕してくれますし、刈り取って畝に置けば有機物マルチとして利用できます。

さらに雑草には害虫の天敵が住み着く効果(バンカープランツ)も期待できます。

確かに野菜栽培において雑草が繁茂することは障害となることもありますので、適宜刈り取る等、一定の管理は必要です。

 

持続可能な土壌による栽培

不耕起栽培は今風に言うとサステナブルな農業です。後述しますがこれまでの慣行農業は地力を消耗し、残念ながら持続可能な農業とは程遠いものです。不耕起栽培は化学肥料や農薬に頼ることなく、生物の多様性が確保された健康な土を維持しながら、野菜栽培をすることを目指します。

 

不耕起栽培の基本がわかったところで、現行の栽培方法についても少し解説していきます!

 

そもそもなぜ耕すのか

そもそもなぜ伝統的な農業では土を耕すのでしょうか。耕すことの効果は下記が挙げられます。

耕起の効果
・土を柔らかくして種まきなどの作業性を上げる
・堆肥、肥料をすきこむことができる
・雑草を除草できる
・通気性を上げる
・微生物の活動を活発化させ、有機物の分解を促進する

 

皆さんが行っている耕起栽培は、このような効果を狙ったものになります。しかし、いい側面だけでなく、悪い側面についても押さえておく必要があります。

 

耕起の負の側面
・土の団粒構造が壊される
・土中生物の住処を破壊する
有機物の分解が促進され、地表付近の地力がどんどん消耗する
・耕すため労力、エネルギーを消費する

 

え、耕すと土が消耗していくの!?知らなかった!

そう、耕すことで消耗するのは皆さんの体力だけではないのです
実は海外の穀物栽培では不耕起が主流になりつつあるんですよ!

 

慣行農業が土地を疲弊させている現状

日本は比較的土壌が豊かであることから、土がやせて作物が育たないといったことはほとんど話題になりません。しかし、海外に目を向けてみると農薬や除草剤を積極的に使用することで土壌中から豊かな生態系が消滅し、さらに土を耕すことで地中の有機物がどんどん消費されることから、地力はますます低下しています。そうなると必然的に肥料を投入する量も増えていきます。当然肥料もタダではありませんので、人々はどうにか肥料投入量を減らせないものかと考えました。

アメリカやブラジル等の世界有数の大規模農業では”不耕起栽培に近い”スタイルが確立されたことから、肥料代や耕運機の燃料代などの節約を達成しています。

ただし、”不耕起栽培に近い”といったのは、実際には化学肥料や除草剤を使用しているためで、あくまで慣行農業の考えからは完全に切り離せていないためです。

現在、世界の穀物生産の主流は不耕起になりつつも、生態系の多様性や雑草との共存等、先ほどご紹介した不耕起栽培の基本的な考えとは少し異なります。

これは飛行機やドローンを使った農薬散布をするような大きな農場では、不耕起栽培を実現するのが難しいこともまた事実だということを物語っています。

 

不耕起栽培のメリット・デメリット

これまで不耕起栽培のいいことばかりを述べてきましたが、「不耕起栽培を積極的にやりましょう」と推奨しているわけでもありません。

それは不耕起栽培にデメリットも存在するからです。

ここでは不耕起栽培のメリットとデメリットについて解説します。

 

不耕起栽培のメリット①:労力があまりかからない

これはとても大きなメリットです。

耕うんを伴う栽培ではトラクターや鍬で土を耕して畝立てしたり、除草したりと野菜栽培のための補助的な作業にかなりの負担がかかります。

一方で不耕起栽培では土も耕さず一度立てた畝は使い続けますし、除草に関して神経質になる必要もありません。

 

不耕起栽培のメリット②:土壌生物が活性化し、病害虫被害が減る

作物の周辺には別の植物が生えており、テントウムシなどの天敵が常に近くにいるため、害虫被害が減少します。また土壌中の多様性も豊かになるため連作障害等も発生しづらくなる傾向があるようです。これは生態系が豊かであるため、特定の病害虫のみが活性化する環境が生まれづらいためと考えられます。

 

反対にデメリットについても見ていきましょう!

不耕起栽培のデメリット①:耕うん栽培より収量が劣る

耕うん栽培では作物が根を張る層全体に肥料や堆肥をすきこむことができるため、作物が効率的に肥料を活用でき、収量が見込めます。

一方で不耕起栽培では肥料は土表面にしか施さないため、植物が根を張る地中深くまで効率的に肥料を届けることが難しいことが考えられます。

しかし、2007年の東北農業研究センターの研究によるとトウモロコシに関しては不耕起栽培でも同等の収量が得られることが発表されています。

(参考URL:https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2007/tohoku07-03.html

また、植物にとっての三大栄養素の中で、最も植物にとって吸収しづらいのがリン酸です。こちらもトウモロコシでの研究ですが、リン酸に意識を置いて追肥してやると耕うん栽培と遜色ない収量となるという研究結果も見られます。

今後も不耕起栽培の研究が進み、効率のよい施肥方法の確立や品種改良が進むことで不耕起栽培でも耕うん栽培と遜色ない収量になることを期待しましょう。

 

不耕起栽培のデメリット②:地力を蓄えるまでに時間がかかる

豊かな団粒構造を有し、地力のある土壌になれば肥料をせっせと施さずとも最小限の肥料で作物が育つようになります。

不耕起栽培では地力を蓄えるために残渣を持ち出さず、またマメ科などの緑肥作物を育てるなどの地道な蓄積で少しずつ地力を高めていきます。

もともと痩せた土壌環境であった場合、地力のある土が完成するまでには数年の辛抱を要する可能性がありますが、積極的に外部から有機物(わらやもみ殻)を持ち込み地力を蓄えます

 

不耕起栽培のデメリット③:市民農園では周囲の理解が必要

当然多くの方が耕うん栽培を実践しており、雑草も防除して当たり前の世界ですから、その中でひと区画だけ雑草がほったらかしにしてある区画があると奇異の目で見られるだけでなく、疎ましく思われる可能性があります。

市民農園不耕起栽培を実践するには周囲の理解を得てからが無難です

 

まとめ

不耕起栽培のメリット、デメリットについて理解していただけたでしょうか。

最後に耕うん栽培と不耕起栽培のまとめた表を作成しましたので、改めてメリット、デメリットの理解にご活用ください。

 

この記事で、不耕起栽培に興味をもった方は、今回参考にさせてもらった書籍をご一読ください。

 

 

それではまた次の記事で会いましょう!