理系と学ぶ家庭菜園術

理系なりの解釈で野菜づくりを学んでいきます

菌根菌やエンドファイトって?土づくりを支える微生物5選について解説!

こんにちは、けいたろうです!

今回は目に見えない、畑の地下で営まれている菌類のはたらきについて、ご紹介します。

畑の土1gには10億以上の細菌がいると言われていますが、これらの中から特に土づくりに関わる重要な菌類をピックアップして解説していきます!

菌類を増やすコツについてもご紹介していきます。

 

この記事はこんな人におすすめ!
・土づくりに関わる菌について詳しく知りたい方
・豊かな土作りに興味がある方

 

土づくりにかかわる微生物たち

有機農法は別名「微生物農法」とも呼ばれるほど様々な微生物の力を借りながら作物を育てています。

微生物には生物の遺体を土に還す分解屋の役割があり、ここでは5つの微生物について説明します。

 

①菌根菌

菌根菌はカビの仲間です。菌根菌は菌糸の一部を植物根の表皮下の組織内に潜り込ませて、植物から糖分をもらって生活しています。

一見ただの迷惑な菌かと思いきや、菌根菌は糖分をもらう見返りとして根が届かないところにあるリンや微量栄養素を集めて根に供給したり(内生菌根菌)、根の表皮周囲に叢(くさむら)構造の菌糸の膜を作って有害微生物の侵入を阻むはたらき(外生菌根菌)をします。ちなみにこの菌根菌のおかげで、植物が吸収できる養分が格段に違ってくることが実際に証明されています。

このように菌が表皮に干渉することで、植物は内部では抗酸化物質や様々な植物栄養素の生成が促されるそうです。

内生菌根菌のはたらき(リンや微量栄養素を集めて根に供給)

 

内生菌根菌はアブラナ科アカザ科(ホウレンソウなど)、タデ科(ソバ)など少数の植物種には共生しないものの、ほとんどの植物と共生します。菌根菌は雑草とも共生しますので、作物周辺に雑草が生えていると、作物にも早く菌根菌が定着します。

また菌根菌は菌糸でアメーバ状に生息域を拡大していきます。拡大した菌糸は複雑なネットワークを形成し、菌糸を介すことで植物間で栄養のやり取りをしているような世界が広がっているのです。

 

外生菌根菌のはたらき(有害微生物の侵入を阻む)

 

②エンドファイト

菌根菌と似た働きをする微生物群「エンドファイト」が注目されています。

エンド(=内部)ファイト(=植物)は内生菌と訳され、自然界ではほとんどの植物が根の中や地上部の組織内に共生菌(カビや細菌)を棲まわせています。

菌糸の一部が根の外に伸びると、土壌中の水に溶けたアミノ酸やリン酸を植物に送り届けます。植物からは見返りとして糖分を受け取っている点は菌根菌と同様です。

根の外に伸びた菌糸は、その先が別の植物根に入り込むことがあり、エンドファイトが植物の根を橋渡しすることで、栄養の橋渡しも行われます。

エンドファイトの特徴は以下の通りです。

 

エンドファイトの特徴
・酸性土壌や貧栄養などの不適地で植物を助ける
・自然界ではほとんどの植物に棲みついている
・土壌中の窒素が有機態(アミノ酸類)である場合に植物に侵入
・低温条件で植物生育を促す
・植物生育を促す植物ホルモンを生成させることがある
・植物が病害虫に強くなる

 

病害虫に強くなるメカニズムとしては、エンドファイトが根に侵入することで植物が刺激され、植物体内で病害抵抗性反応を誘導する効果があるためです。

ちなみにエンドファイトをうまく作物に定着させるには化学肥料を使わず、なるべく耕さないで雑草を生やすことが有効です。

 

③窒素固定微生物

窒素固定微生物は空気中の窒素を自身のタンパク源にして増殖し、結果的に植物が利用できる窒素源を増やすはたらきがあります。

窒素固定微生物の代表が根粒菌で、マメ科の植物と共生する例がよく知られています。

ダイス、クローバーなどはこれらの菌と共生、生育に必要な窒素分を菌からわけて成長しています。

窒素固定菌をうまくはたらかせるには栄養が多すぎないこと、適度に草を生やすことが大切と言われています。

 

④硝化(しょうか)菌

雑草を鋤きこんだり堆肥を混ぜ込んだりすると、一時的にアンモニアが発生します。これらが途中にたまると作物にとって有害ですが、硝化菌はこのアンモニアを植物が吸収できる形(硝酸イオン)まで変化させる役割があります。

硝酸菌はアンモニア亜硝酸を栄養とする無機栄養微生物です。これらは無機栄養分を餌にして増殖することができ、土壌微生物中には約5%ほどしか存在しない貴重な存在です。ちなみに残りの95%は反対に有機物を餌にする有機栄養微生物です。

 

⑤根圏微生物

根圏には無数の微生物が存在しています。

根圏で生活する微生物たちは、根から分泌される糖分、有機酸、老廃物などから栄養を摂っています。

これらの微生物は根の周囲の有機物を分解して浄化し、リサイクルして再び植物の栄養源につくりなおします。

さらに枯れた根や堆肥などの有機物を分解して得られたアミノ酸などを、自分のエネルギー源、タンパク源にして増殖し、分解した栄養を次々と植物に供給します。

このように根圏微生物と植物は、大まかなくくりでみたときに共生している関係と言うこともできます。

 

菌類を増やすには?

土づくりには様々な菌が活躍していることがわかったところで、次はこのような菌が住み着きやすくする環境づくりについて解説します。

 

①化学薬品を使用しない

除草剤や農薬は、土中の生物多様性を破壊します。

自然界では様々な生物がちょうどよいバランスを保ちながら生活をしていますが、人為的に化学薬品が散布されることでそのバランスが壊れ、生態系が乱れます。

散布したあと、しばらくすると生態系のバランスは再び整えられますが、微生物たちの生活環境を崩すことは、豊かな土作りとは逆方向となってしまいます。

 

②化成肥料を使用しない

化成肥料は即効性があり、非常に便利な肥料ではありますが有機物を含まない点が欠点となります。

なぜなら微生物は有機物を主に食しているためです。

微生物たちの食べ物となる有機物を土に供給する意味では、化学肥料だけ使用する方法はおすすめできません。

おすすめは家庭で簡単に作れるぼかし肥料を追肥元肥として使うことです。

詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください!

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

③土をむやみに耕さない

微生物のはたらきを最大限に生かす最適な方法、それは土を耕さないことです。

土を耕さないことで微生物や植物の根を取り巻く微生物のはたらきを、最大限に生かすことができます。

耕すという行為は、土を柔らかくして植物が根を張るのにいい環境を作るために行います。しかし実は、目に見えない土中微生物の住処を破壊している行為でもあるのです。

ただ不耕起栽培に馴染みがなく、新しい栽培方法にチャレンジするのをためらう気持ちも十分理解できますし、私のように市民農園で周囲の理解を得ることが難しく、やむなく耕起栽培を継続している方もいらっしゃるかと思います。

不耕起栽培には地力が上がるなどのメリットがたくさんありますので、まずは知識だけでも身に着けてはいかがでしょうか。知識の習得には過去の記事が役立ちます。

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

 

rikeinokateisaien.hatenablog.com

 

まとめ

いかがでしたか?土づくりには多くの菌類が関わっています。今回ご紹介した菌類以外にも土中には数えきれないほどの菌類が生息しており、複雑な生態系を築きあげています。

特に菌根菌やエンドファイトは近年非常に注目されている菌類で、今後も研究が進めばさらなる役割等が発見されるかもしれないです。

目に見えない菌たちに感謝しながら、家庭菜園ライフを楽しみましょう。

それでは次の記事でまたお会いしましょう!