【道法スタイル】垂直仕立て栽培で収量・食味が向上!!その原理とは?
こんにちは、けいたろうです。
突然ですが皆さんは垂直仕立て栽培って聞いたことがありますか?
私は最近知ったのですが、近頃注目されている新しい栽培方法のようです。
今回は道法正徳さん著”野菜の垂直仕立て栽培”を読みましたが、これまでの常識からは想像もできないような栽培法が紹介されています。
今回はこの謎に包まれた「垂直仕立て栽培」の考え方や原理について、ご紹介したいと思います。
この記事はこんな人におすすめ!
・垂直仕立て栽培について詳しく知りたい人
・新しい栽培方法に興味がある人
・おいしい野菜づくりをしたい人
・無農薬で病害虫被害を防ぎたい人
記事の内容に入る前にまず結論を先に言います。
この記事の結論
垂直仕立て栽培は植物が本来持つホルモンの力を最大限生かした斬新な栽培法
垂直仕立て栽培では無肥料で形・食味の向上が期待できる
垂直仕立て栽培とは
まずは垂直栽培の基本的な考え方についてご紹介します。
垂直仕立て栽培とは、文字通り野菜の枝や葉をすべて垂直方向に誘引する栽培法です。
この栽培法では、植物が本来持つホルモンのはたらきを最大限に生かすことにより
収量や食味の向上が期待できるのです。
この記事を読み終えたあなたも、半信半疑ながら「垂直仕立て栽培」に挑戦したくなっていることでしょう。
垂直仕立て栽培のキーワード
垂直仕立て栽培で重要な言葉の説明を少ししてから、本題に入ります。
①植物ホルモン
②無施肥
③不耕起
キーワード①:植物ホルモン
私も植物学者ではないので、詳しい話はできませんが今回垂直に仕立てることで
活発に活躍する4つの植物ホルモンについて簡単に解説します。
オーキシン
発根を促す植物ホルモンで、主に新芽付近でつくられます。
新芽付近で作られたオーキシンは垂直方向に下降し、
根の先端に届けられることで新しい根が次々に形成されます。
またオーキシンは結実性を高めたりや細胞を伸長させたり植物の生長全体に作用しており、
オーキシンを化学合成したものは「トマトトーン」として広くトマト栽培等に使われています。
サイトカイニン
細胞分裂を促す植物ホルモンで、根の先端部分でつくられます。
根の先端でつくられたサイトカイニンは導管を通って地上部へ運ばれます。
細胞分裂を促すということは、植物の代謝が活発になるということです。
そのため、①着花量が増える、②傷口の修復がよくなる、等の効果が期待できます。
別名「若返りホルモン」ともいわれます。
エチレン
果実の熟期を促す植物ホルモンで、細根でつくられます。
よく「リンゴと一緒に保存すると野菜が傷みやすくなる」という話を聞くのは
リンゴからエチレンが発せられるため、周りの野菜たちが熟されているわけですね。
エチレンは植物の体の中では、酸化エチレンとなり病気や害虫を防ぐ役割も果たしています。
実はこの酸化エチレンは、非常に攻撃性の高い分子であり殺菌力があります。
この酸化エチレンは医療機器等の滅菌に使用されるほどです。
ジベレリン
枝や葉の成長を促す植物ホルモンで、細根でつくられます。
ジベレリンにはわき芽を増やす効果がある一方で、着花を阻害し熟期を遅らせる
はたらきもあります。
実はジベレリンは窒素過多の状態になると植物体内で増えるホルモンであり、
窒素過多の時に見られる症状はジベレリンが引き起こす症状といっても過言ではありません。
ちなみに窒素過多の際にはエチレンの分泌が低下することも知られており、
窒素過多の植物にアブラムシ等が集まりやすいのはホルモンバランスの乱れが
原因のようです。
さらに余談ですがジベレニンは種無しぶどうを作る際に使用される植物成長調整剤(農薬)でもあります。
キーワード②:無施肥
垂直仕立て栽培では肥料、堆肥を一切必要としません。
むしろ肥料や堆肥を施した状態で垂直仕立て栽培にトライすると
失敗するケースが多々あるようです。
これは、先ほどの植物ホルモンのバランスが崩れることが原因です。
垂直仕立て栽培では、植物が元来持っているホルモンのはたらきと
「光合成」で作られるエネルギーだけで十分成長できるのです。
キーワード③:不耕起
基本的に一度作った畝は、形を整えながら何回も再利用するのが垂直仕立て栽培の基本です。
まったく耕さないわけではないのですが、中耕したり土寄せしたりする程度で問題ないようです。
土壌微生物がつくりだした構造を耕運機で壊さないようにするのがこの栽培のコンセプトです。
垂直仕立て栽培のここが斬新!!
私が思う、垂直仕立て栽培の斬新(素直に受け入れずらい)ポイント4選です。
①枝や葉もすべて垂直に仕立てる
②肥料や堆肥は入れてはダメ
③わき芽を摘んではダメ
④畑には石を積極的に入れる
斬新ポイント①:枝や葉もすべて垂直に仕立てる
これが一番重要なポイントです。
生長点付近でつくられるオーキシンは発根や細胞の伸長を促します。
生長点でつくられたオーキシンは下方に向かっていきますが、茎などが
垂直に仕立てられているとスムーズに根まで運ばれ、途中でオーキシンが
浪費されにくくなるそうです。
オーキシンが最大限に根まで運ばれれば、発根作用が働き、さらに根でつくられる
サイトカイニン、エチレン、ジベレリンの生成も活発になります。
この植物ホルモン生成の好循環を回していくことが、植物の生育をよくすることにつながります。
このトリガーとなるのは「垂直に仕立てる」ことなのです。
斬新ポイント②:肥料や堆肥は入れてはダメ
垂直仕立て栽培で肥料等を用いるとジベレリンのはたらきが促進され、葉や枝ばかりが伸びます(ツルボケ)。
畑に肥料分が残っている場合2年、3年と続けていくうちに畑の余分な肥料分が抜け、
垂直仕立て栽培に適した土壌へと変化していくようです。
斬新ポイント③:わき芽を摘んではダメ
植物ホルモンの好循環の起点となる、オーキシンは生長点でつくられます。
そのため、わき芽のような生長点は摘まないようにしましょう。
斬新ポイント④:畑には石を積極的に入れる
いまだに半信半疑なのですが、植物の根は石とぶつかると細根が増えるため
根でつくられる植物ホルモンが活性化するそうです。
これが植物の生育にプラスに働くことで植物の生育がよくなるのだとか。
著者によると、石は「おたから」なので、取り除かずにむしろ積極的に
土に混ぜることを推奨しています。
ちなみに著者は、石が作土の4割を占めるくらいを理想とされています。
垂直仕立て栽培のメリット
では次に垂直仕立て栽培のメリットについて紹介していきます。
①生育がよくなり収穫量が増える
②野菜の味がよくなり栄養価も高くなる
③病害虫に強く、天候不良の影響も受けにくくなる
④土づくりの必要がなくなる
メリット①:生育がよくなり収穫量が増える
植物がもつホルモンが通常よりもはたらきやすい環境であるため、
野菜が元気に育つことができます。
根の張りがよくなることで、わずかな土中の養分も吸い上げることができますし
結実にかかわるオーキシンのはたらきも活発になるため、収穫量も増えます。
メリット②:野菜の味がよくなり栄養価も高くなる
通常の栽培に比べホルモンのはたらきがバランスよく活性化することにより、
野菜の糖度向上などが期待できるそうです。
メリット③:病害虫に強くなる
植物自体が元気に育つため自衛能力が上がります。
もう少し言うと、病害虫を忌避するエチレンがはたらきやすくなるため、
病害虫の被害が劇的に減ります。
メリット④:土づくりの必要がなくなる
これまで土に入れていた肥料、堆肥を土に入れて耕すという行為が
ほとんど必要なくなります。
そのため、経済的でもありますし労力の削減にもつながります。
垂直仕立て栽培のデメリット
では次に垂直仕立て栽培のデメリットについて紹介していきます。
①肥沃な土壌では失敗するリスクがある
②垂直に誘引するため、背の高い支柱が必要になる
③高所の作業が増えるため、注意が必要
④こまめな誘引が必須
⑤支柱の数が多く必要となる
デメリット①:肥沃な土壌では失敗するリスクがある
肥沃な土壌で垂直仕立て栽培を行うと、肥料がたくさんある状態で植物ホルモンの
はたらきも加わるため、植物ホルモンのバランスが崩れます。
これによりうまく結実しなかったり、病害虫にやられてしまったりと失敗する
リスクが高まってしまいます。
繰り返しますが、垂直仕立て栽培の基本は「無施肥」です。
デメリット②:垂直に誘引するため、背の高い支柱が必要になる
通常の栽培では誘引をしない作物(サツマイモ、カボチャ等)でも垂直に誘引するため
特にツル性の作物では、背の高い支柱が必須です。
雨風の中でも支えられるように高さ2m以上、太さ20mm程度の丈夫なものを
用意する必要があります。
デメリット③:高所の作業が増えるため、注意が必要
垂直仕立て栽培では垂直方向にぐんぐん背が伸びるため、誘引作業が
次第にやりづらくなります。
炎天下の中、ふらっとしたはずみに踏み台から落ちる、といったリスクもはらんでいますので注意が必要です。
デメリット④:こまめな誘引が必須
垂直に誘引することで、植物ホルモンのバランスを保っていることから
この誘引をさぼるとホルモンバランスが崩れやすくなります。
少し手間ですが、こまめに誘引する必要があります。
デメリット⑤:支柱の数が多く必要となる
この栽培をする場合、通常栽培では誘引をしない葉物野菜等も誘引することになりますので
支柱や、紐といった資材が余分に必要になります。
どうしてもこの初期投資は必要になってきます。
私の考え
この本を読んだ私の考えとしては、少しずつ垂直仕立て栽培を試しながら
その実力や効果を確かめていきたいという結論になりました。
実際に取り組んだ際には、また記事にしますのでお楽しみに!
さいごに
今回は道法流・垂直仕立て栽培についてご紹介しました。
重要なポイントをまとめると以下の通りです。
・どんな野菜でも支柱に垂直に誘引する
・肥料、堆肥は施肥しない
・わき芽も摘まない
・肥料の代わりに石を入れる
このほかにも、著者は無施肥の土壌環境になじみやすいように自家採種を
薦めています。
注意ポイントや、各野菜ごとの注意点や詳しい誘引方法はここでは
紹介しきれないので、ぜひ今回私が参考にした本をチェックしてみてください!
私が実際にサツマイモで垂直栽培を実践してみましたので、こちらの記事も参考にしてみてください。
rikeinokateisaien.hatenablog.com
それでは次の記事で会いましょう!