理系と学ぶ家庭菜園術

理系なりの解釈で野菜づくりを学んでいきます

【新常識】不耕起栽培とは?メリットやデメリットについて詳しく解説!!

こんにちは、けいたろうです。

今回は不耕起栽培についてご紹介したいと思います。

まだ実践するには至っていないものの、様々な書籍等に触れるにつれ不耕起栽培が今後、家庭菜園界の主流となるのではないかと感じています。

今回は今後、主流となるかもしれない不耕起栽培について概要やメリット、デメリット等をご紹介したいと思います。

 

この記事はこんな人におすすめ!
不耕起栽培について知りたい方
有機無農薬栽培に関心がある方

記事の内容に入る前にまず結論を先に言います。

この記事の結論
不耕起栽培は生物の多様性を重視する世界の新潮流である!

え、世界の新潮流ってどういうこと!?

まあ、慌てないで。じっくり解説していきますよ。

 

 

不耕起栽培の基本的な考え方

人の代わりに生き物が耕す

不耕起栽培は文字通り耕さない、つまり極力自然に近い土の状態で野菜を育てます。自然界では土を耕すのはミミズ 植物の根にお任せです。ミミズが土を耕すのは有名な話ですよね。詳しく知りたい方はこちらの記事をぜひ。ミミズのありがたみがよくわかります。

また植物の根は土中を縦横無尽に張り巡り、やがて枯れます。根が枯れたあとにはトンネル状の根穴(こんけつ)構造ができあがり、毎年繰り返されるこのサイクルは耕すことと同じ効果をもたらします。

 

雑草は有用資源

雑草はこれまで邪魔者として扱われていましたが、不耕起栽培ではいかにうまく雑草と付き合っていくかを考える必要があります。

なぜなら雑草の根は先ほども述べたように土を耕してくれますし、刈り取って畝に置けば有機物マルチとして利用できます。

さらに雑草には害虫の天敵が住み着く効果(バンカープランツ)も期待できます。

確かに野菜栽培において雑草が繁茂することは障害となることもありますので、適宜刈り取る等、一定の管理は必要です。

 

持続可能な土壌による栽培

不耕起栽培は今風に言うとサステナブルな農業です。後述しますがこれまでの慣行農業は地力を消耗し、残念ながら持続可能な農業とは程遠いものです。不耕起栽培は化学肥料や農薬に頼ることなく、生物の多様性が確保された健康な土を維持しながら、野菜栽培をすることを目指します。

 

不耕起栽培の基本がわかったところで、現行の栽培方法についても少し解説していきます!

 

そもそもなぜ耕すのか

そもそもなぜ伝統的な農業では土を耕すのでしょうか。耕すことの効果は下記が挙げられます。

耕起の効果
・土を柔らかくして種まきなどの作業性を上げる
・堆肥、肥料をすきこむことができる
・雑草を除草できる
・通気性を上げる
・微生物の活動を活発化させ、有機物の分解を促進する

 

皆さんが行っている耕起栽培は、このような効果を狙ったものになります。しかし、いい側面だけでなく、悪い側面についても押さえておく必要があります。

 

耕起の負の側面
・土の団粒構造が壊される
・土中生物の住処を破壊する
有機物の分解が促進され、地表付近の地力がどんどん消耗する
・耕すため労力、エネルギーを消費する

 

え、耕すと土が消耗していくの!?知らなかった!

そう、耕すことで消耗するのは皆さんの体力だけではないのです
実は海外の穀物栽培では不耕起が主流になりつつあるんですよ!

 

慣行農業が土地を疲弊させている現状

日本は比較的土壌が豊かであることから、土がやせて作物が育たないといったことはほとんど話題になりません。しかし、海外に目を向けてみると農薬や除草剤を積極的に使用することで土壌中から豊かな生態系が消滅し、さらに土を耕すことで地中の有機物がどんどん消費されることから、地力はますます低下しています。そうなると必然的に肥料を投入する量も増えていきます。当然肥料もタダではありませんので、人々はどうにか肥料投入量を減らせないものかと考えました。

アメリカやブラジル等の世界有数の大規模農業では”不耕起栽培に近い”スタイルが確立されたことから、肥料代や耕運機の燃料代などの節約を達成しています。

ただし、”不耕起栽培に近い”といったのは、実際には化学肥料や除草剤を使用しているためで、あくまで慣行農業の考えからは完全に切り離せていないためです。

現在、世界の穀物生産の主流は不耕起になりつつも、生態系の多様性や雑草との共存等、先ほどご紹介した不耕起栽培の基本的な考えとは少し異なります。

これは飛行機やドローンを使った農薬散布をするような大きな農場では、不耕起栽培を実現するのが難しいこともまた事実だということを物語っています。

 

不耕起栽培のメリット・デメリット

これまで不耕起栽培のいいことばかりを述べてきましたが、「不耕起栽培を積極的にやりましょう」と推奨しているわけでもありません。

それは不耕起栽培にデメリットも存在するからです。

ここでは不耕起栽培のメリットとデメリットについて解説します。

 

不耕起栽培のメリット①:労力があまりかからない

これはとても大きなメリットです。

耕うんを伴う栽培ではトラクターや鍬で土を耕して畝立てしたり、除草したりと野菜栽培のための補助的な作業にかなりの負担がかかります。

一方で不耕起栽培では土も耕さず一度立てた畝は使い続けますし、除草に関して神経質になる必要もありません。

 

不耕起栽培のメリット②:土壌生物が活性化し、病害虫被害が減る

作物の周辺には別の植物が生えており、テントウムシなどの天敵が常に近くにいるため、害虫被害が減少します。また土壌中の多様性も豊かになるため連作障害等も発生しづらくなる傾向があるようです。これは生態系が豊かであるため、特定の病害虫のみが活性化する環境が生まれづらいためと考えられます。

 

反対にデメリットについても見ていきましょう!

不耕起栽培のデメリット①:耕うん栽培より収量が劣る

耕うん栽培では作物が根を張る層全体に肥料や堆肥をすきこむことができるため、作物が効率的に肥料を活用でき、収量が見込めます。

一方で不耕起栽培では肥料は土表面にしか施さないため、植物が根を張る地中深くまで効率的に肥料を届けることが難しいことが考えられます。

しかし、2007年の東北農業研究センターの研究によるとトウモロコシに関しては不耕起栽培でも同等の収量が得られることが発表されています。

(参考URL:https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2007/tohoku07-03.html

また、植物にとっての三大栄養素の中で、最も植物にとって吸収しづらいのがリン酸です。こちらもトウモロコシでの研究ですが、リン酸に意識を置いて追肥してやると耕うん栽培と遜色ない収量となるという研究結果も見られます。

今後も不耕起栽培の研究が進み、効率のよい施肥方法の確立や品種改良が進むことで不耕起栽培でも耕うん栽培と遜色ない収量になることを期待しましょう。

 

不耕起栽培のデメリット②:地力を蓄えるまでに時間がかかる

豊かな団粒構造を有し、地力のある土壌になれば肥料をせっせと施さずとも最小限の肥料で作物が育つようになります。

不耕起栽培では地力を蓄えるために残渣を持ち出さず、またマメ科などの緑肥作物を育てるなどの地道な蓄積で少しずつ地力を高めていきます。

もともと痩せた土壌環境であった場合、地力のある土が完成するまでには数年の辛抱を要する可能性がありますが、積極的に外部から有機物(わらやもみ殻)を持ち込み地力を蓄えます

 

不耕起栽培のデメリット③:市民農園では周囲の理解が必要

当然多くの方が耕うん栽培を実践しており、雑草も防除して当たり前の世界ですから、その中でひと区画だけ雑草がほったらかしにしてある区画があると奇異の目で見られるだけでなく、疎ましく思われる可能性があります。

市民農園不耕起栽培を実践するには周囲の理解を得てからが無難です

 

まとめ

不耕起栽培のメリット、デメリットについて理解していただけたでしょうか。

最後に耕うん栽培と不耕起栽培のまとめた表を作成しましたので、改めてメリット、デメリットの理解にご活用ください。

 

この記事で、不耕起栽培に興味をもった方は、今回参考にさせてもらった書籍をご一読ください。

 

 

それではまた次の記事で会いましょう!