畑の地力を上げるには?地力アップのコツを徹底解説!
こんにちは、けいたろうです。
不耕起栽培について調べていると、よく「地力」という言葉に出会います。
地力という言葉はとても曖昧で、意味がわかるような、でもしっかりとはわからない・・・という方も多いのではないでしょうか。
今回はこの地力について、ご紹介していきたいと思います。
また、地力を上げる方法についてもご紹介します!
この記事はこんな人におすすめ!
・土壌を豊かにしたい方
・地力について学びたい方
・不耕起栽培に関心がある方
記事の内容に入る前にまず結論を先に言います。
この記事の結論
豊かな生物多様性が地力を上げる!
地力とは
地力というのはすごく曖昧な表現ですが、簡単に言ってしまうと「よく肥えた土」「植物を育てる能力が高い土」と言い換えられます。
ではこの地力について、2つの観点から深堀りしていきましょう。
栄養地力
栄養地力とは作物に栄養や水分を供給する力(肥沃度)のことです。
土が肥沃だと肥料をあげなくても作物が育ち、大雨でも肥料成分が容易に流出しません(保肥力が高い)。
地力がある土壌は外部から投入された養分(肥料)がなくとも、微生物の分解等によって有機物から養分が作られるため、少量の肥料で作物がよく育つようです。
これらの栄養分が蓄えられているのが、腐植と呼ばれる構造です。
腐植構造が多い土は保肥力が高く、栄養地力が総じて高いです。(腐植についてはあとで詳しく解説します)
緩衝地力
緩衝地力とは地温や水分量、土中の空気量、養分濃度、pHなどを一定に保つ力のことを指します。
また、病害虫を増殖させないという意味での緩衝作用が高い土は地力が高いです。
植物の根は、常に一定の環境下にあることを好みます。病原菌を少なくしたり、自分の根から出す老廃物で自家中毒にならないようにすることが土には求められます。
そのため土中の緩衝力が高い土は、植物がよく育つ豊かな土ということができます。
腐植が多い土は緩衝能力にも長けています。
腐植っていう言葉が2回も出てきたんだけど、腐植って何?
腐植についても簡単に説明していきましょう!
腐植とは
腐植とは植物や虫、微生物などの遺体や排泄物が微生物によって分解されたのち、さらに再合成によってつくられた土壌固有の高分子化合物で、土壌の貯金とも表現されることもあります。
腐植は黒っぽくて粘りがあり、細かい土の粒子がくっついた団粒を作り出します。
団粒が集まってできる構造が団粒構造であり、団粒構造が豊かな土壌では水と養分がたっぷりと蓄えられています。
また団粒構造が発達している土は排水性、通気性にも優れており植物の根にとって快適な空間です。
繰り返しになりますが腐植、ひいては団粒構造を生み出すのは土中生物です。つまり、この土中生命の活動を活性化させることが、地力を上げるための近道なのです。
畑における生物多様性とは
豊かな土壌を作るためには、腐植を作り出す生物たちの活動が不可欠であることを学びました。では生物の活動を活性化させるためにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、土中の食物連鎖を理解することで生物多様性についてご紹介します。
畑における土壌生物の種類
グループ1:枯れた植物や生物の遺体を食べる腐植動物
ミミズ、ヤスデ、ワラジムシ、トビムシ、ササラダニなどがこの部類に当てはまります。有機物の初期分解を助ける役割があります。
グループ2:他の虫や生きた小動物を食べる捕食動物
クモ、ムカデ、ゴミムシ、ハネカクシ、トゲダニなどがこの分類に当てはまります。グループ1の生物等を捕食し、土壌内外の生物バランスを保っています。
グループ3:小動物よりも小さな生物
菌類(カビ類)、細菌類、アメーバのような原生生物などがこの分類に当てはまります。これらの生物は数えきれないほどの種類がおり(土中生物の約70%程度)、複雑な食物連鎖を構築しています。これらの生物は有機物の分解と循環を担っており、病害虫との拮抗作用に役立っています。
微生物の中には植物と共生関係にあったり、土づくりにかかわったりする硝化菌、菌根菌、窒素固定菌などが存在しており、有機栽培では大変お世話になる菌たちです。
土壌生物は土壌表面で生活している
これまでご紹介した土壌生物は主に地表付近に多く存在しています。つまりこれらの生物のはたらきを活性化させるには、土壌生物たちの居場所を提供することが一番大切だと言えます。このような観点から考えると、定期的に地表を耕すという行為は、生物たちの居場所を壊し、生物相をリセットするため多様性を育むことと真逆のことをしていると言えます。
根圏が織りなす生物多様性
根圏とは植物の根の養水分吸収活動、根からの物質分泌や根が枯れることによって有機物が提供されるなど、多数の土壌生物が活発に活動している範囲のことを指します。根圏と非根圏の土を比較すると、驚くべきことに生息している微生物の数が2~20倍ほど違うとも言われています。
つまり、植物の根は生物にとって大事な住処になるということです。
この根が多い土地、つまり雑草だらけの土がいかに生物多様性が豊かか想像するだけでワクワクしますよね。
地力が上がる不耕起栽培
①不耕起は腐植を増やす
実はこれまで紹介してきた地力を上げる方法、つまり「腐植を増やす」「生物多様性を豊かにする」ためには不耕起栽培が向いています。
腐植を増やすためには有機物や生物の遺体が豊富にある状態が必須です。不耕起栽培では基本的に除草はせず、また作物の残渣等も持ち出さないのが基本的な考えですので、通常の慣行栽培よりも有機物が土に還りやすい環境にあります。
加えて、雑草をあえて除草しないため土の中には豊かな根圏が築かれ、生物多様性も増します。生物多様性が築かれればおのずと地力はどんどん豊かになっていきます。
②不耕起は土に炭素(有機物)を送り込む
不耕起栽培では、土が常に植物に覆われた状態であり、慣行栽培のように土が露出している場所はありません。
自然環境の中で、土が露出するような環境はごく一部の不健康な土だけです。
植物が土を覆っているという状況は、実は土にとても良い状態と言えます。
なぜなら、植物は土中に有機物(炭素)を送り込む大切な役割を担っているからです。
植物は光合成をして空気中の二酸化炭素から単糖類を合成しており、この単糖類の一部は根から土中に漏れ出していきます。
この漏れ出す単糖類を栄養にして、微生物の活動が活発になり団粒化の促進につながります。
植物は微生物に栄養をおすそわけすることで、その見返りとして自身の住環境をよくしてもらい、微生物からは養分をわけてもらいます。まさに共生関係と言えます。
地力が下がる慣行栽培
化学肥料を使い、土を積極的に耕す慣行栽培では地力を消耗するばかりです。なぜなら土を耕すことで土壌生物の住環境を破壊しますし、除草することを基本とするため根圏も豊かになりません。地力向上のためには、少なくとも根が地中に残っているほうが微生物の住処となるため、除草の際は根を残すことが理想です。
さらに慣行栽培では土が露出していることから、炭素分が十分に土中に送り込まれないため、微生物の活発も活発化しにくくなります。
まとめ
ここまで地力を上げるための考え方についてご紹介してきました。
地中の微生物の力は私たちが考えるよりもはるかに大きく、生物多様性が保たれる環境では地力向上が期待できます。
生物多様性を高めるには、以下の取り組みがおすすめです。
いかがでしたか?
次の記事では、根圏ではたらく菌類について詳しく解説します。
それでは次の記事でまた、お会いしましょう!